歪み(ユガミ)

2024年9月7日


ギター弾き界隈では歪み(ヒズミ)と読んで、オーバードライブやディストーションなどを指すことが多いこの言葉だけど

 

今回は歪み(ユガミ)と読む話。

 

 

実は今現在、音楽業界、特にバンド業界は歪んでいると感じている。

 

 

古い話にはなるが、CDの売り上げで潤っていた時代を我々の世代(40代〜50)は過ごしてきた。

 

その裏にはカラオケのブームなんかもあったりして、CDを買うこと自体にも価値があった。

 

ハッキリ書いてしまうと、今とは音楽の単価が違う。売値1,600円程度のCDの卸値は700円〜高くて900円程度

 

例えば1万枚売れれば800万円程度の売り上げが見込める。(粗利や税金の話はややこしくなるので割愛)

 

今のサブスクで800万円売り上げるのを目標にするのは非現実的で、グッズやライブのチケット収益で補おうとするのが自然な流れである。

 

なのでチケット代が上がっているのも自然な流れだ。

 

先述した800万円も全て儲けではなく、レコーディング代やプロモーション費用、人件費もそこから賄っていかなきゃいけない。

 

しかし今と比べりゃ天国だ。

 

 

サブスクは今の市場に参加するために仕方なく登録利用しているが、俺は昔から反対派だ。

 

良くも悪くも流行った音楽が収益的にも強くなる構図で、多くのミュージシャンやバンドは都合よく使われているに過ぎない。

 

「あなたはここで成功できるかもしれませんよ!」って触れ込みはいつの時代も存在するが、ここまで単価が下がった時代があっただろうか。

 

チヤホヤされてるようで、ナメられている。

 

 

雑誌媒体も弱くなった。雑誌に魅力がなくなったわけではなく、消費者の時間を占有できなくなった。

 

YouTubeで動画を見てると、なんだか読書が高貴な趣味みたいな気になってくる。

 

タイパなんて馬鹿みたいな言葉が出てきて、要はモノを考えさせないようにスマホに包囲されているわけだ。

 

「その中で成功するのがプロだ!」って声が聞こえてきそうだが、違うのだ。

 

本当は自分たちの活動する場所も作れるのがプロなのだ。

 

 

ミュージシャンは今、どこかの賢い人が作った池の中で餌を待つ魚だ。窒息を恐れて誰も池の外には出ようとしない。緩やかに餓死しようとしてるのに。

 

そして池の中で少し気の強いことを発言すれば奇人扱い。平均値なんてクソ喰らえと叫びながらぶっ壊す立場のはずのアーティストってやつなのにね。

 

音楽の創作は、人間の中にある奇跡でもある。

 

本来、種の繁栄以外を目的としない生き物にとって、文化は蛇足であり救いだ。

 

そして今、その奇跡のはずの文化はがんじがらめだ。

 

 

ハイスタのナンバさんがSNSに書き込んだGREEN DAYの件が話題になっていた。

 

そしてそれを擁護する声や批判する声も当然出てきた。

 

当事者以外はわからないことばかりなので、すぐに言及する術を俺は持たなかったが、この話題についてSNSで触れれば、まるで自分がハイスタとGREEN DAYに肩を並べた気分になるなと感じたんだ。

 

「ナンバさん!どうしたの!?」なんて言い始めたら、まるで自分が同じ立場で同じ経験をしてきたような気になってくる。

 

コントロールされそうになった瞬間だった。

 

なんて危険なんだろうと思った。

 

そしてSNSがなければ、一連のナンバさんの発言は、曲として世の中に出てきていたかもしれないなとも思った。

 

本来の我々の世代が持っていたはずのムーブだ。

 

雑誌にインタビューでこの話題が載っていたら、また印象も違ったかもしれない。

 

 

コロナ禍なんてバカな時代があって、ウィルスがあるかないかで言えば、今も当たり前のように存在してるはずなのに あの当時と同じように過ごしている人はどれくらいいるだろう。

 

隣人に張り紙をして「これが正義と常識である!」なんて言っていた人がいたのも、なんと数年前だ。

 

また価値観が変わって、今ライブシーンは活気を取り戻しつつある。それは良いことなんだけど

、バンドシーン、ライブシーン、音楽業界は歪んでいる。

 

今度は急激に戻り過ぎたのだ。

 

ブッキングや企画等もやらなきゃいけない。チケットの相場を調べたり、どのバンドがどの規模でできるかも知らなきゃいけない。

 

純粋に音楽に向き合う時間は削られる。その作業量は増えたと実感してる。(企画を立てるのは好きだけどね)

 

が悪いって話ではなく、単純に時代と時代に挟まれて歪んでいる。

 

個人の力では及ばないことが多い。海流と海流に挟まれたら魚だって泳げない。

 

 

だから、少し冷静に。

 

 

今の自分の周りにあるものって、自分が好んで集めてきたものではない。

 

物と情報が多すぎる。本来の自分を見失うための素材が揃い過ぎている。

 

そしてそれに現時点で対抗できないのは悪いことではない。賢くやり過ごせばいい。

 

早急な判断が求められる我々の仕事だけど、一歩引いて何が何に影響を及ぼしているかも知らなくてはいけない。

 

そして使える物は使い、バカにすんなよって気持ちを守りながら戦っていかなければいけない。

 

人生の可能性は、自分で決めれることを忘れてはいけない。

 

誰かに価値観を託すことなく、自分を信じてうまく生きていって欲しい。

 

俺だって納得のいかないことや、腹の立つこともある。なんでこんな事やってんだろうと思うし、自分を卑下した方が楽な瞬間もある。

 

しかし、最後の底辺は捨てていないつもりだ。それは誰が何を言っても。だってそれこそが自分なのだから。

 

 

最後に

 

歪みを嘆いているわけではない。これはいつの時代もある。

 

ただ自分がその中にいて、視界を遮るものがあるのを知っておかなければいけない。

 

数字、評価、いろんなものに翻弄されるだろう。

 

我々はミュージシャン、本来はまず自分にとって本当に正直な気持ちで作った曲ありきだ。

 

迷ったらそこに立ち戻ればいいと思う。

 

この文章を書くのも時間がかかっている。タイパって言葉を借りればまさに最悪だろう。

 

動画にした方が見てもらえる頻度は上がるし、配信ライブ等で発言した方が注目されるかもしれない。

 

しかし俺はまず、歪みの中であっても自分の価値観で自分を守れる場所を作りたいのだ。

 

SNS上でここまで書いた事を発言するのと、自分でシステムを組んだこのページで発言するのとでは同じ文章でも別の価値になる。

 

大事なのはそこなのだ。それを見失わないようにしたいのだ。

 

この歪みを楽しめるくらいの人間として生きていたいのだ。

 

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